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研究室紹介冊子OPAL‐RING 永松秀朗 研究室

金属材料を用いた3Dプリンティング技術の高度化

所属 大学院情報理工学研究科
機械システム学専攻
メンバー 永松 秀朗 助教
所属学会 精密工学会、日本機械学会、溶接学会
研究室HP https://www.h-ngamatsu.lab.uec.ac.jp/index.html
印刷用PDF 永松秀朗 研究室(PDF:1.9MB)

掲載情報は2026年5月現在

永松 秀朗
NAGAMATSU Hideaki

キーワード

生産加工、付加加工、固相接合、マルチマテリアル、アーク溶接、高速造形、金属組織、接合強度、溶滴移行

立体的な造形物を高速に作製できる3Dプリンターが近年、モノづくりの現場に次々と導入されています。例えば、航空機分野ではエンジンのタービンブレードや燃料ノズルといった部品の製造、自動車分野においては、各種部品の製造から量産車の試作までと幅広く使われています。また、医療分野では、臓器や骨、血管などの3D生体モデルを作製する技術が実用化に向けて加速しています。
1980年代に日本で発明された3Dプリンターは、高機能部品をオーダーメードで作れるという製品開発ニーズの高まりを受け、市場規模が年々拡大しています。従来の生産技術である切削加工は、丈夫な材料の加工が難しく、加工できたとしても材料の除去率が90%程度と高く、さらに工具が摩耗しやすいという欠点があります。一方、金属による成形加工は金型の製造に多大な時間とコストを要します。

アーク溶接方式3Dプリンターの課題を解決

金属材料を用いた3Dプリンティング技術を研究する永松秀朗助教は、「良いモノをいかに安く、速く、環境負荷の少ない形で作るかという生産加工の分野において、3Dプリンターがこれまでの常識を覆していく」と見通しています。3Dプリンターを使えば、たとえ加工しにくい難削材であっても、強度を保ちつつ、軽量で高温下でも耐える複雑な部品を作れるなど、用途に合わせた多品種少量生産が可能になります。
3Dプリンターには大きく7種類あり、主に樹脂材を用いた樹脂3Dプリンターと金属3Dプリンターに大別されます。永松助教は金属3Dプリンターの中でも、金属を溶かして積層しながら造形するアーク溶接方式を採用し、シンプルで安価な溶接ノズルを使った「直交3軸タイプ」と、産業用ロボットに最新の溶接ノズルを取り付けて複雑な形状を作れるようにした「多軸関節ロボットタイプ」の二つの装置を扱っています。

実験室の3Dプリンターと溶接の様子

レーザーや金属粉末を用いる方式に比べ、溶接をベースとする方式は造形精度が低い反面、低コストで材料の切り替えが容易なほか、大型造形が可能という優位性があります。永松助教はアーク溶接方式の3Dプリンターの既存の課題に対し、複数の材料(マルチマテリアル)を使って接合の難しい異種金属同士を積層する「異種金属積層法」と、造形スピードの限界に挑戦する「高速化」手法、さらにこれらの条件を満たす固相接合法を基にした「摩擦肉盛法」の三つの解決策を提案しています。

機械的結合による異種金属の積層法を開発

一つ目のテーマでは、金属の積層が困難な冶金的な接合ではなく、機械的な結合によるアプローチに着目しました。内部に十字型や柱型などの構造体を埋め込んで異種金属を積層する手法を開発し、実際に、アルミニウムのブロック上にチタンを高精度に造形することに成功しました。まず、チタン構造体をアルミ上に造形し、その後アルミで囲い、さらにチタン表面層を形成するといったように、材料を切り替えながら交互に積層していきます。内部構造体のない従来の一般的な造形手法では、界面が剥離しやすいなどの問題がありましたが、「機械的接合により造形したチタン-アルミ構造体は、強度を従来比約3倍に向上することができた」(永松助教)そうです。

異種金属積層法

直接冷やし高速に造形する

二つ目の高速化の手法においては、造形物を直接冷やすことによって冷却速度を早め、金属内部の結晶構造を改善しています。通常、金属3Dプリンターでは、造形物の高温化に伴って弱い結晶構造が形成されることから、温度を下げるためにたびたび休止させる必要があります。これに対し、永松助教は造形しながら同時に冷えた銅材を押し当てて冷却することで、結果的に従来比9倍超の速度で高強度のマグネシウム合金を造形できることを示しました。

製造速度の高速化を実現

高速かつ高強度に異種金属を接合

最後の摩擦肉盛法は、棒材を高速回転させながら基材に接触させ、その摩擦発熱によって棒材の先端を軟化させた後に、これを動かしながら加圧することで、塑性流動した「肉盛層」を積んでいく造形手法です。アルミなどの金属を融点の80%ほどまで加熱し、溶融させずに冶金的に接合(固相接合)するため、「冷却不要で造形スピードが従来比10倍速く、異種金属同士も高強度に接合できるなど、多くの利点を持つ新しい造形法になる」と永松助教は考えています。

製造速度の高速化を実現

このような次世代の金属3Dプリンティング技術の実用化を目指し、永松助教は他大学や企業などと連携しながら、研究をさらに深化させていく予定です。

【取材・文=藤木信穂】