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研究室紹介冊子OPAL‐RING 木下雄貴 研究室

環境性と経済性を同時に評価する「サステナブル生産」

所属 大学院情報理工学研究科
情報学専攻
メンバー 木下 雄貴 准教授
所属学会 日本経営工学会、日本LCA学会、日本オペレーションズ・リサーチ学会、日本設備管理学会、日本保険学会
研究室HP https://researchmap.jp/yuki_kinoshita
印刷用PDF 木下雄貴 研究室(PDF:2.5MB)

掲載情報は2026年5月現在

木下 雄貴
KINOSHITA Yuki

キーワード

経営工学、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、多目的意思決定、CO2評価、サービスオペレーション、分解生産計画、サプライチェーン、補償不正検出、環境配慮型生産

現代社会で重要なキーワードである「サステナブル(持続可能)な開発」は、「将来の世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現代の世代のニーズを満足させる開発」と定義されています。近年は持続可能な開発目標(SDGs)の下、社会と環境、経済の三つの側面から組織の活動などを評価する“トリプルボトムライン”の概念も再び注目されています。特に生産活動においては、資源の効率的な利用や廃棄物の削減、サプライチェーン(供給連鎖)の管理といった環境への配慮と、経済合理性をいかに両立させるかが企業にとって大きな課題となっています。

経営工学の一領域

経営工学の領域において、環境配慮型のサステナブル生産について研究する木下雄貴准教授は、数理最適化やシミュレーション、機械学習の手法を用いて、幅広い研究課題について環境性と経済性を同時に評価することを目指しています。例えば、「コストは3%増加するが、リサイクル率は12%向上するといった生産システム設計を考究している」と木下准教授は説明します。具体的には、グローバル低炭素型サプライチェーン設計、分解生産計画、補償不正検出センサAI(人工知能)などの研究テーマに取り組んでいます。

カーボンニュートラルに向けたサプライチェーン設計

一つ目のテーマでは、製品・サービスの環境負荷を数値化して蓄積したライフサイクルインベントリ(LCI)データベースを使って二酸化炭素(CO2)量を算出し、各国のカーボンポリシーやCO2排出量、材料・調達コストなどを考慮しながら、国をまたいだサプライチェーン設計を追求しています。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け、各国が炭素税やCO2排出規制などを設けていますが、炭素価格や関税率は国によって異なります。こうした点を勘案することで、例えば、企業がどこの国のサプライヤーから部品を仕入れ、どの場所に工場を建設し、どれくらい生産すればよいかといった検討が可能になるといいます。
数理計画の手法を使い、CO2排出量と生産コストを同時に削減するサプライチェーン設計モデルを開発できれば、企業が数十年先を見越した工場の新設計画などを立てることができます。さらには、「負担増の大きい産業界に配慮しながら、炭素価格をいかに決定するかといった政策の検討にも生かせる」と木下准教授は見通しています。このように、国内にとどまらず、炭素税や関税、コスト面など複数の条件を満たしながら、グローバルなサプライチェーン設計を行う研究はまだ少ないそうです。

環境に優しくコストは安く

二つ目のテーマは分解生産計画です。新製品の組み立て時と異なり、使用済み製品を分解する際には多くの「不確実性」を伴います。例えば、使用済み製品の状態やその種類、部品の回収個数や使われている材料はさまざまでしょう。また、分解の方法も、再組み立てや部品リユース、材料リサイクル、廃棄など、状態に応じて異なる処理が求められます。再製造品においては、ソフトウェアのセキュリティサポート期間が終了しているなど、ソフトに脆弱性があったり、そのリスクが高かったりする場合もあります。
こうした背景において、木下准教授は「どの使用済み製品を何個分解すると、環境に最も優しく、またコストも低く抑えられるか」との観点から、線形物理的計画法(LPP)を用いて、不確実性とセキュリティなどを考慮した分解生産計画モデルを開発しました。環境性はリサイクル率やCO2回収率などを評価しています。

中古品の“不正発見器”を開発する

最後は、中古品の補償不正を検出するセンサAIの開発です。顧客に加え、修理会社や部品供給会社、保険会社など、多数の利益相反があるステークホルダーが関わる中古品の製造工程においては、故意に損傷を付けて保険金を水増し請求したりする修理不正や、虚偽の請求を行ったりする顧客不正が起こり得ます。
木下准教授は、センサと機械学習で補償不正を検知する技術を開発し、特許を出願しました。偶発的な事故による損傷と、故意の損傷とでは、中古品に加わる衝撃が異なるのではないかとの仮定の下、両ケースにおける加速度データを取得し、機械学習でそのデータを判別することを目指しています。
現在はレゴブロック製の車に加速度センサを取り付けて実験し、データを収集した上で、まずは概念の実証を目指しているそうです。いずれは「センサと機械学習によるこの技術で『不正発見器』を開発し、中古品の補償不正の防止につなげたい」と木下准教授は考えています。

【取材・文=藤木信穂】