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研究室紹介冊子OPAL‐RING 大須賀 研究室

ネットワーク上のあらゆるデータを分析して実世界の状況に応じたサービスを提供するシステムの開発

掲載情報は2015年8月現在

所属 大学院情報システム学研究科
社会知能情報学専攻
大須賀 昭彦
Akihiko OHSUGA
清 雄一
Yuichi SEI
メンバー 大須賀 昭彦 教授
折原 良平 客員教授
川村 隆浩 客員准教授
清 雄一 助教
所属学会 人工知能学会、情報処理学会、電子情報通信学会、日本ソフトウェア科学会、IEEE Computer Society
研究室HP http://www.ohsuga.is.uec.ac.jp/

キーワード

エージェント、人工知能、セマンティックWeb、自己適応システム、Webサービス、ソーシャルメディア、データマイニング、Linked Open Data、プライバシー

研究概要

ソーシャルメディアやセンサの普及

ユーザが自由に情報を発信できるソーシャルメディアの普及により、人々の行動や身の回りの出来事などに関する情報がWeb上のデータとして蓄積されている。また、スマートフォン搭載のGPSや各種センサ、各地に設置された気象・環境センサなどが生成するデータも、Webを介して利用可能になってきている。さらには、二次利用可能な形で政府や企業などから提供されるオープンデータの整備も進んでいる。
これらのデータを活用し、実世界の状況や人々の行動に合わせて適切なサービスを提供できる可能性がでてきた。たとえば、普段のソーシャルメディアへの投稿内容と現在地の情報を組み合わせてユーザの好みに合った近くのレストランを推薦したり、人の混雑状況や日差しの強さからお年寄りにやさしい散歩コースを提案したり、地域の犯罪や交通事故に関するデータを用いて子供の安全な帰宅ルートを提案したりすることなどが可能となる。
こういったサービスの中で、前もって状況を予測しにくく種々の危険を伴う災害発生時の支援に対するニーズは極めて高い。この支援においては、突然の災害に対し、被災状況や人々の避難行動、交通機関の運行状況などを分析し、周囲の安全な避難場所を提示したり、適切な避難行動を提案したりすることが期待される。しかし、災害時に発生する多種多様で大量かつ複雑なデータの分析は容易でなく、さらには、前もって予測できないあらゆる事態の中で安定してサービスを提供し続けることには多くの技術的困難を伴う。

実世界の状況に応じたサービスの提供へ向けて

当研究室ではさまざまなソーシャルメディアデータ、センサデータ、オープンデータを収集し、実世界の状況をリアルタイムに把握する技術の研究を行っている。さらに、ニーズに合わせてより詳細にデータを分析し、適切なサービスを提供するシステムの構築を進めている。この実現に向けて鍵をにぎるのがエージェント指向ソフトウェアである。エージェント指向ソフトウェアとは、究極的にはソフトウェアが人間同様に知的に振る舞うことを目指し、人工知能やソフトウェア工学の最先端の技術を組み合わせることで、ソフトウェアの自律性や柔軟性を実現したものである。エージェント指向ソフトウェアは、状況に応じて自分自身の振る舞いや構造を変更することができ、これによって、予想を超える大量のデータの処理や、予期せぬ実世界の状況変化、人々の行動の変化に対応することが可能となる。当研究室ではエージェント指向ソフトウェアの要素技術として、主にデータマイニング技術、自己適応技術、プライバシー保護技術の研究を進めている。

想定外の環境変化に対応する自己適応技術

近年、システムの大規模・複雑化に伴い、環境の変化に対しても人が介在すること無く、動的に環境に適応するシステムが求められるようになっている。特に災害時には、大量のデータをリアルタイムに収集・分析する必要がある上に、多数のユーザが短時間にサービスを利用するため、予期せぬ負荷集中が発生する恐れがある。また、災害のために一部のサーバやネットワークが利用不可能となることも予想される。自己適応技術を有するソフトウェアは、このような想定を超える環境変化でシステムが停止しかねない状況においても、自律的に機能を分散して個々のサーバの負荷を低減したり、データ分析の精度やサービスのレベルを下げてシステム全体の負荷を低減したりすることで、可能な限りサービス提供を継続する。

個人を守るプライバシー保護技術

個人に関わる様々な情報が蓄積されるようになると、思わぬ情報が他の情報と紐づけられて個人のプライバシーが漏洩するという新たなリスクが生じてくる。そこで、当研究室ではプライバシーを保護したまま効果的にビッグデータを解析する技術を開発した。災害時においても、緊急性が低い段階ではプライバシー保護に配慮したデータ解析を行う必要がある。緊急性が高くなった場合はプライバシー保護レベルを下げてでもユーザの状況を詳細に解析することが望ましく、このトレードオフを動的に取ることが可能となる。

アドバンテージ

震災時の避難行動支援システムにおける実績

震災発生時に人々が実際にどのような避難行動をとっているかを表す避難行動ネットワークをTwitter上の情報からリアルタイムに生成する手法を構築している。この避難行動ネットワークを活用し、ユーザの状況に応じた適切な避難行動を推薦するシステムのプロトタイプを開発し、実験評価によりその有用性を確認している。

今後の展開

Web上で入手可能なデータは、今後も増え続けると考えられる。これにより、実世界の状況や個人の嗜好・行動がより詳しく把握できるようになる一方で、個人のプライバシーが侵害される危険性も高くなる。今後は、データマイニングの精度や効率を高めていくと同時に、ユーザの利便性とプライバシー保護のバランスのとれたサービスのあるべき姿を追求し、その開発方法論や運用メカニズムの研究を進めていく。

避難行動ネットワークを活用した避難経路の探索例
避難行動推薦マップの表示画面例