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UECで究める

研究室紹介冊子OPAL‐RING 細川敬祐 研究室

光と電波を用いた宇宙通信環境のリモートセンシング

所属 大学院情報理工学研究科
情報・ネットワーク工学専攻
メンバー 細川 敬祐 教授
所属学会 日本地球惑星科学連合、地球電磁気・地球惑星圏学会
研究室HP http://gwave.cei.uec.ac.jp/index.html
印刷用PDF 細川敬祐 研究室(PDF:1.6MB)

掲載情報は2026年5月現在

細川 敬祐
HOSOKAWA Keisuke

キーワード

リモートセンシング、オーロラ、衛星通信、磁気圏、電離圏

近年、太陽の表面で起こる巨大な爆発現象「太陽フレア」が頻発しています。太陽フレアによって光やX線、紫外線などの強力な電磁波が放出され、その爆風に伴って高エネルギー粒子や太陽ガスが大量に地球に到達することで、通信や放送、全地球測位システム(GPS)測位のほか、航空機や船舶の運航、宇宙システムの運用など幅広い分野に影響が及んでいます。この太陽フレアに伴って強い磁気嵐が起こると、北海道など高緯度の地域では日本でもオーロラが観測されることがあります。

電離圏の乱れのメカニズムを解明

細川敬祐教授は、太陽フレアなどを背景とした宇宙通信環境の変化を、光と電波を使ったリモートセンシングによって研究しています。太陽から放射された紫外線や、オーロラを発生させる高エネルギー電子が地球に突入し、地上60キロ-1000キロメートル付近に存在する「電離圏」(電気を帯びた空間)が乱れると、例えばGPS測位の際に位置情報がずれるなど、電波を利用した通信インフラが影響を受けることが明らかになっています。
このような電離圏の乱れが、いつ、どこで、どのように起きるのかを理解し、予測するため、細川教授はノルウェーやフィンランド、スウェーデン、アラスカにカメラを設置してオーロラを観測してきました。また、ノルウェーではレーダーで電波を宇宙空間へ送り、跳ね返ってきた電波を調べたり、長野県菅平高原や石垣島など日本各地でも観測を行ったりと、国内外で光や電波による計測を重ねてきました。細川教授は「電離圏の乱れのメカニズムを理学的に解明し、最終的には、地上の天気予報のように『宇宙天気予報』として工学的に予測できるようにしたい」と考えています。

オーロラを観測

例えば、ノルウェーで行ったGPSに対するオーロラの影響計測では、地上でオーロラを撮影しながら、GPS衛星からの測位信号の品質を調べました。その結果、オーロラ発生時に電離圏の電子密度が変化し、通過する電波の位相が乱れて受信信号の品質が低下する様子が明らかになり、これを可視化することに成功しました。

また、電子増倍型電荷結合素子(EMCCD)カメラを設置して、高度約100キロメートルのオーロラを観測し、その微弱な光を信号の増幅によって高感度にとらえることでも電離圏の乱れを測定しています。最近では、空間分解能の高い相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カメラを導入し、よりノイズを抑えた高感度観測が可能になりました。「高速で変化するオーロラを毎秒20枚ほどのスピードで撮影しており、データ量が膨大になるため、機械学習でオーロラの有無を自動判定した上で、必要な画像のみを抽出して解析している」(細川教授)そうです。

スポラディックE層のイメージング

一方、電波による計測では、電離圏の電子密度が極端に増大した領域であり、通信電波を反射して長距離の伝搬を引き起こす「スポラディックE層」について研究しています。地上100キロメートル付近の電離圏の下部に、夏季に発生するスポラディックE層は、超短波(VHF)帯の混信や、ギガヘルツ帯(ギガは10億)衛星通信のシンチレーション(擾乱)を引き起こすことで知られています。
細川教授は、国内の航空航法無線や放送で使われるVHF帯電波の長距離の異常伝搬について調べるため、スポラディックE層の広域構造のイメージングに取り組んでいます。この異常伝搬を常時計測することで、スポラディックE層が航空航法などに与える影響を予測できることから、現在、国内の十数カ所に航空航法電波の受信点を、3カ所に船舶無線の受信点を整備し、データのリアルタイム公開を目指しています。

通信への影響を推定する

さらに、スポラディックE層が出現する場所やその形を観測するため、全球衛星測位システム(GNSS)の受信網を使った解析にも乗り出しています。航空航法電波、船舶無線、GNSSの各データを統合することで、すでにスポラディックE層の速度や形、分布などが時間とともに変化する様子を高解像度で可視化できており、「雨雲レーダーのように、将来、スポラディックE層の分布をリアルタイムに予測することができれば、通信への影響度などを事前に警告するといった使い方ができるかもしれない」と細川教授は見通しています。

【取材・文=藤木信穂】