掲載情報は2015年8月現在
所属 | 大学院情報理工学研究科 情報・通信工学専攻、 宇宙・電磁環境研究センター |
![]() Fengchao XIAO |
メンバー | 肖 鳳超 教授 | |
所属学会 | 電子情報通信学会シニアメンバー、IEEEシニアメンバー | |
研究室HP | http://www.emclab.cei.uec.ac.jp/ | |
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環境電磁工学、電磁環境両立性(EMC)、プリント回路基板(PCB)、イミュニティ(電磁耐性)、クロストーク、TEM Cell、4-Septum TEM Cell、マイクロ波、マイクロ波イメージング
昨今、電子機器の小型化が進んでおり、その基板もよりコンパクトに高集積化される傾向にある。それにより、狭い基板内に多くの配線が集約され、配線同士が非常に接近することになる。その結果、近接した配線間で発生した電磁波が干渉し、製品が誤動作を起こすことがある。しかも、電磁波が影響していることには気付きにくく、いったん組み上がった製品では原因究明が難しい上、設計段階でも電磁波に配慮しているものは少ないのが現実である。
当研究室では、未解明なことが多いEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁環境両立性)の研究を行っており、中でも次の3つの点に注目している。
PCB関係の研究では、伝送線路間の結合現象であるクロストークのメカニズムについて研究している。最近の電子機器は多層化されているので、配線の長さや形状によって電磁波にどのような影響を与えるか、グランドに関しての欠落の影響についても調べている。これらのことを法則化することで、EMCに強い基板作りが可能となる。
EMC計測技術の研究に関しては、TEM(Transverse Electro-Magnetic)Cellという装置が使われる。この装置はボックスに電子機器を入れて、強い電磁界をかけた時の反応を調べるものである。既存のTEM Cellは、計測対象に一方向だけの電磁界をかけるが、当研究室では電磁界をかける方向をゆっくり回転することができる4-Septum(4内導体) TEM Cellを開発している。これにより、一度計測対象を装置にセットすれば、あらゆる方向からの電磁界をかけて測定することが可能になる。電磁界を回転させるには専用の信号を作らなければならないが、この信号回路も当研究室で製作している。実際に測定した結果でも電磁界の回転が証明されている。
環境電磁工学の学問体系は確立されたとは言えず、現在発展途上にある。今のところ、磁界を測定することから電界や電力流の測定をして電磁波放出のメカニズムを研究しているのは、当研究室だけである。
PCBにおけるEMC測定に関してさまざまな共同研究を行い、トレースに影響しないような間隔を具体的に実験してきたことで、どこまでは大丈夫で、どこからがだめなのかを規定できるようになった。このようなノウハウを活かして、基板配線のEMCガイドラインを作成している。最近の基板はコンピュータを使って設計を行っているので、性能を求めることを最優先にしている。しかし、設計段階でEMCに対して何も考えずに設計してしまうと、電磁妨害波の問題が生じたときには対策に時間がかかる。そこで、当研究室のガイドラインに従って設計を行えば、妨害波に強いものが作れる。そのため、このガイドラインは世界各地の多くの企業から引き合いがある。
当研究室製作の4-Septum TEM Cellは、印加方向を電子的に制御しており、短時間で測定できる。また、通常は1方向だけ測定して、他の方向は推測するだけであるが、この装置では実データの測定ができ、よりリアルなデータが得られるのも大きなアドバンテージである。今後は共同研究を行い、4-Septum TEM Cellの製品化を目指している。
既存のTEM Cellの場合、印加電磁界の方向が一方向だけなので、異なる印加方向での測定を行うには、測定対象物を別の方向にセットし直さなくてはならない。
分からないことも多いEMC研究ではあるが、今後、放射の仕組みが分かれば、適切な対策が施せるようになる。このようなEMC研究を積み上げて、EMCに関する問題を解決していきたい。
また、新しい分野で、自動車業界の電子機器にも関心がある。自動車には、ラジオやCDに加えて、最近ではカーナビやETCなどの電子機器も搭載されるようになり、それらが共存することが難しくなってきている。簡単な例では、ラジオに雑音が入るといったことが起こる。この原因として、長いハーネスから出ている電磁波がラジオに影響している可能性がある。電化の進む自動車業界では、EMCの問題はいっそう重要となることが予想される。その中で、当研究室のEMC技術が業界の牽引役になるよう積極的に展開していきたいと考えている。