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【ニュースリリース】円筒形太陽電池による都市型発電の有効性を実証 -実測データに基づく最適設置条件を提案-

2026.07.15

ポイント

  • 円筒形太陽電池の発電特性を実環境で長期間測定し、発電量を高精度に予測できるモデルを構築した。
  • 円筒形太陽電池は平板型太陽電池と比較して日射に伴う温度上昇が小さく、温度上昇による発電損失を大幅に低減できることを明らかにした。
  • 都市部の屋上および壁面利用を想定した最適設置条件を明らかにした。
  • 建物一体型太陽光発電(BIPV)の設計に活用可能な実証データを提供した。

概要

本間憲人氏(情報学専攻博士前期2年)、田村郁樹氏(情報学専攻博士前期課程2025年度修了)、中村雅規特任研究員(i-パワードエネルギー・システム研究センター)、早瀬修二特任教授(i-パワードエネルギー・システム研究センター)、横川慎二教授(i-パワードエネルギー・システム研究センター/情報学専攻)らの研究グループは、都市部における新しい太陽光発電技術として期待される円筒形太陽電池について、実際の屋外環境で発電性能を評価し、建物壁面を含む都市空間への導入に向けた設置・設計の指針を示しました。
本研究では、実測データに基づいて円筒形太陽電池の発電特性を評価するとともに、屋上や建物壁面への適用性を検証しました。その結果、円筒形太陽電池は、さまざまな方向からの光を利用しやすい構造と優れた放熱性を備えており、都市部において効率的に利用できる可能性を示しました。さらに、設置場所や用途に応じた効果的な設置・設計の考え方を提示しました。
本成果は、建物一体型太陽光発電(BIPV)の普及を促進するとともに、これまで十分に活用されてこなかった建物壁面を利用した都市型太陽光発電の実現に貢献することが期待されます。
この成果は、電気・電子工学分野の国際学術誌「IEEE Access」に掲載されました。

背景

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大が世界的に求められています。特に都市部では、利用可能な土地が限られることから、建築物の屋根や壁面を活用した太陽光発電の重要性が高まっています。
しかし、現在広く用いられている平板型太陽電池(太陽光パネル)は、太陽光の入射角度によって発電量が大きく変化するほか、周辺建物による影や設置環境の影響を受けやすいという課題があります。また、高温環境においても発電量が低下するため、都市部において必ずしも十分な性能を発揮できるとは限りません。
これに対し、円筒形太陽電池は、円筒状の受光面によりさまざまな方向からの光を受けやすく、散乱光や反射光も有効に利用できる特徴を持ちます(図1)。さらに、直径3cm程度の円筒構造によって放熱性にも優れることから、建物壁面への設置に適した新しい太陽光発電技術として期待されています。
一方で、円筒形太陽電池については、実際の屋外環境における発電性能や温度特性、さらには都市部での効果的な設置条件に関する知見が十分に蓄積されていませんでした。そこで本研究では、実環境下での測定データに基づき、円筒形太陽電池の発電特性を評価するとともに、都市部への導入に向けた設置・設計の考え方を検討しました。

図1.円筒形太陽電池の集光特性の概念図。直達光(Direct)、散乱光(Scattering)、反射光(Reflected)など、あらゆる方向からの光を受け取ることができる。

手法

本研究では、電気通信大学構内に設置した円筒形太陽電池を用いて、実際の屋外環境における発電性能を評価しました。日射量や太陽の位置、太陽電池の表面温度、発電量を継続的に測定し、設置する方位や傾斜角を変えながら、影響を与える要因を統計的に分析しました。さらに、これらの測定データを基に、日射条件や太陽光の当たる角度、表面温度から発電量を予測するモデルを構築し、別の日に取得した測定データを用いて予測精度を確認しました。また、同じ環境に設置した従来の平板型太陽電池との比較を行い、温度変化や発電特性の影響の違いを評価しました。最後に、構築したモデルを用いて、都市部における屋上設置や建物壁面への設置を想定したシミュレーションを実施し、設置条件が発電性能や季節ごとの発電傾向に与える影響を比較・評価しています(図2)。

図2.電気通信大学キャンパス内における円筒形太陽電池の実験例。

成果

従来の平板型太陽電池は、太陽光が正面から当たる場合に高い発電性能を発揮しますが、都市部では建物による影や太陽光の入射方向の変化を受けやすく、屋根以外への設置では十分な性能を発揮できない場合があります。また、日射による温度上昇が発電性能の低下につながることが課題となっています。
本研究では、実際の屋外環境で取得した測定データを基に円筒形太陽電池の発電特性を評価した結果、円筒形太陽電池は、さまざまな方向からの光を利用しやすく、日射による温度上昇が比較的小さいため、都市部において比較的安定した発電量を維持できる可能性があることを示しました(図3)。さらに、実測データを活用して発電量を予測する手法を構築するとともに、屋上や建物壁面への設置を想定した評価を行い、設置場所や用途に応じた効果的な設置・設計の考え方を示しました(図4)。
本研究により、円筒形太陽電池の特長を実環境で実証するとともに、都市部における建物一体型太陽光発電(BIPV)の設計や導入を支援する基礎的な技術基盤を構築しました。この成果は、これまで十分に活用されてこなかった建物壁面を利用した新しい都市型太陽光発電システムの実現につながることが期待されます。

図3.サーモグラフィによる円筒形太陽電池と平板型太陽電池の温度上昇比較の例。円筒形太陽電池は日射による温度上昇が抑制される。
図4.設置角度βと設置方位γを変えた、晴天日基準の年間発電量の比較シミュレーション結果。

今後の期待

本研究で得られた成果は、建物の屋根だけでなく、これまで十分に活用されてこなかった建物壁面や非常階段、バルコニーなどの空間を発電設備として利用するための設計指針として活用されることが期待されます。これにより、既存の建物への追加設置が可能となると同時に、都市部における建物一体型太陽光発電(BIPV)の普及が進み、限られた都市空間を有効活用した再生可能エネルギーの導入拡大につながることが期待されます。
電気通信大学では、今後、より長期間の実証研究や実際の建築物への適用を進めるとともに、本研究で得られた知見を、次世代太陽電池であるペロブスカイト太陽電池を用いた円筒形太陽電池「Pérovia Tube」の研究開発へ展開していきます。
将来的には、学校やオフィスビル、商業施設、マンションなどの壁面そのものが発電設備となり、都市全体で再生可能エネルギーを創り、利用する新しいエネルギー社会の実現に貢献することが期待されます。

(論文情報)

著者名:Kento Honma; Fumiki Tamura; Masaki Nakamura; Shuzi Hayase; Shinji Yokogawa
論文名:Urban Solar Harvesting With Cylindrical Solar Cells: Field Performance and Optimal Installation
雑誌名:IEEE Access
DOI:10.1109/ACCESS.2026.3702690
公表日:2026年6月11日(木)

(外部資金情報)

本研究は、JSPS科研費JP23K26330の助成を受けたものです。

詳細はPDFでご確認ください。

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