2026.11.02
国立大学法人電気通信大学と株式会社高速道路総合技術研究所のグループは、現在、国内の高速道路トンネル内で実際に使用されている火災検知器を対象に、光ファイバ給電のみで駆動するとともに、同一の光ファイバを利用して、火災の検知信号を制御局側に同時双方向伝送することに成功しました。また、今回開発した内容は、IEEEが発行するPhotonics Technology Lettersの最新号(Vol. 38, no. 22, 2026)に掲載されました。
この実験では、1本の光ファイバで大電力の光パワーと高速のデジタル信号の伝送が可能な独自のダブルクラッド光ファイバを用いることで、10Wを超える電力の給電と火災の検知信号の同時伝送を実現しました。現在運用されている火災検知器は通信用と電力用の2本のケーブルが必要であり、これを1本の光ファイバ給電で駆動し、かつ火災が発生した際に発信される検知信号を制御局側まで高品質のまま伝送したのは初めての試みであり、電気ケーブルにおける雷害対策や配線コスト削減に有効であると考えられます。
高速道路設備における雷害は全国で毎年発生しており、落雷による誘導電流は、トンネル内の火災検知器や制御局側の機器の故障をまねき、安全な運用を図る上で長年の課題になっています。そのため全国各地の高速道路設備は、ケーブルへのサージ保護機器設置の対策を講じていますが、侵入経路が複数ある等によって誘導電流を防げない事例も出ており、より一層の対策が求められています。
一方、光ファイバは無誘導な伝送線路でありながら、光による給電が可能なことから、電気を通さない電力線として利用することができます。雷による誘導電流を通さないため、雷害が多い山間部での電力線としての利用が期待されています。また、光ファイバはガラスで構成されているため、錆びることもなく、耐腐食性に優れていることに加えて、火災を検知した信号を伝送する光送受信器を利用することで、光信号の同時伝送も可能です。このため、火災検知器の駆動と火災が発生した際の検知信号の伝送を1本の光ファイバで実現することで、雷害による被害や腐食に対して、堅固かつ信頼性の高い火災検知システムの構築が期待されています。
1本の光ファイバを利用して、火災検知器を制御局より駆動し、かつ火災検知信号を制御局側に伝送する方法としては、信号伝送用の小口径のコアと大電力伝送用の大口径コアの2重構造から成るダブルクラッド光ファイバを用いた給電システムが考えられますが、従来の方式では火災報知器を駆動するのに十分な電力を供給することができませんでした。今回の共同研究では、このダブルクラッド光ファイバをさらに改良し、純シリカ大口径コアから成る独自のダブルクラッド光ファイバを導入することで、従来の10倍の電力を送ることができ、制御局側に配置された1台の給電光源でトンネル内の火災検知器および検知信号を送信する送信器の無電源化を実現することに成功しました。(図1)、(図2)
今回の実験で利用した光ファイバは300m長であるため、今後は光ファイバ給電による火災検知システムの実用化を目指して、より長距離での実証実験やフィールド実験も実施して行く予定です。
詳細はPDFでご確認ください。