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【ニュースリリース】全身をふくらませたり縮ませたりできる移動ロボット「MOFU」を開発-「体積が変わる動き」が「生き物らしさ」に与える影響を検証-

2026.09.08

ポイント

  • 全身の膨張・収縮と移動が可能で、静音性に配慮し、毛状外装を持つロボット「MOFU」を開発
  • これまで十分に検証されてこなかった全身の膨張・収縮が、ロボットの「生き物らしさ」に与える影響を参加者間計画で検証
  • 膨張・収縮動作と旋回動作はいずれも「生き物らしさ」の評価を高めたが、両者の間に明確な差は認められなかった
  • 2台提示では、1台の場合との間で「生き物らしさ」の評価に明確な差は認められなかった
  • 移動時に旋回と膨張・収縮動作を加えると、移動のみより「生き物らしさ」が高く評価された

概要

仲田佳弘准教授(機械知能システム学専攻)、茂木泰生氏(機械知能システム学専攻博士前期課程2年(当時))、ソニー株式会社の齋藤真里氏からなる研究グループは、全身の膨張・収縮と移動が可能なロボット「MOFU(MOrphing Fluffy Unit)」を開発し、全身の膨張・収縮がロボットの「生き物らしさ(アニマシー)」に与える影響を検証しました。MOFUは、全身の膨張・収縮と移動に加え、静音性に配慮した設計や毛状外装など、生き物らしい印象を意識した特徴を備えています。
研究グループは、各実験参加者が1種類の動画条件のみを評価する参加者間計画によるオンライン評価実験を行いました。その結果、その場から移動しない1台のMOFUでは、膨張・収縮動作と旋回動作はいずれも「生き物らしさ」の評価を高めました。また、膨張・収縮のみと旋回のみを比較した追加の分析では、両者の間に明確な差は認められませんでした。さらに、膨張・収縮するMOFUを2台提示した場合と1台提示した場合の間では「生き物らしさ」の評価に明確な差は認められず、移動時に旋回と膨張・収縮動作を加えた条件では、移動のみの条件より「生き物らしさ」が高く評価されました。
本研究の特徴は、これまで十分に検証されてこなかった「全身の体積が変わる動き」をロボットの表現の一つとして捉え、その「生き物らしさ」への影響を、実機を撮影した動画を用いて検証した点にあります。
本研究成果は、国際科学誌「PLOS ONE」に掲載されました。

背景

医療・福祉分野をはじめ、人と身近に関わるロボットの研究開発が進められています。こうしたロボットでは、機能を実現するだけでなく、人がロボットをどのように感じ、どのように関わるかを考慮した設計も重要です。特に、ロボットに感じる「生き物らしさ」は、人がそのロボットに意図や感情があるように感じることにも関わる基本的な要素の一つと考えられています。
ロボットの「生き物らしさ」には、外見だけでなく、その動き方も影響します。これまで、関節を曲げ伸ばしする動きや、体軸方向に伸び縮みする動きなど、さまざまなロボットの動きが研究されてきました。一方、生き物には、関節を動かすだけでなく、体そのものをふくらませたり縮ませたりする動きがあります。こうした体積の変化は、呼吸などの生理的な動きだけでなく、クジャクの求愛ディスプレイやグンカンドリが喉袋をふくらませる行動など、他の個体に向けた表現として現れる例もあります。
こうした全身の体積変化は、身体全体の形を連続的に変化させるという特徴があります。そこで研究グループは、このような動きも、人と関わるロボットにおいて印象を伝える表現として利用できるのではないかと考えました。これまでにも、呼吸を模して膨張・収縮する装置や、全身の膨張・収縮を機能に利用するロボットの先行例はありますが、その動き自体がロボットの「生き物らしさ」にどのような影響を与えるのかは、十分に検証されていませんでした。
そこで本研究では、全身の膨張・収縮が可能な実物のロボットMOFUを開発し、全身の体積変化をロボットの表現の一つとして捉えて、その「生き物らしさ」への影響を実験的に調べました。

手法

本研究では、全身を膨張・収縮できる球状の移動ロボット「MOFU」を開発しました(図1)。膨張・収縮には、複数の面が連動して形状を変化させるJitterbug構造を利用しています。1つのモータで直動機構を駆動することで全身を膨張・収縮させ、全高は約210mmから280mmまで変化します。また、左右の車輪をそれぞれ駆動する2つのモータを備え、直進や旋回が可能です。

図1:MOFUの外観:(a)毛状外装を装着した収縮状態、(b)同膨張状態、(c)毛状外装を外した収縮状態、(d)同膨張状態、(e)Jitterbug構造を外した状態(収縮時)、(f)同(膨張時)

MOFUでは、膨張・収縮に加えて、静音性や外観にも配慮しました。機械的な動作音を抑えるため、ギアを用いないダイレクトドライブモータや摺動音の小さい部品を採用しています。また、外側を柔らかい毛状の素材で覆い、特定の動物を直接模すのではなく、全身の形状変化が表れやすい球状の外観としました。さらに、バッテリーを内蔵し、外部からケーブルを接続せずに移動できます。
本研究では、こうした特徴の中でも、特に全身の膨張・収縮という動きに焦点を当てました。Jitterbug構造では、膨張・収縮に伴って鉛直軸まわりの旋回が生じます。そこで、車輪を駆動してこの旋回を打ち消すことで「膨張・収縮のみ」の動作を実現するとともに、車輪による「旋回のみ」の動作も設定しました。評価動画では、膨張と収縮を交互に繰り返し、旋回についても、一方向に回り続けるのではなく、左旋回と右旋回を交互に繰り返す動作としました。これにより、膨張・収縮と旋回の影響を分けて比較できるようにしました。また、Jitterbug構造の変形を表す数学モデルを作成し、実機での測定によって、設計した膨張・収縮動作が実現できることを確認しました。
MOFUの動きを撮影した20秒間の動画を用いて、3つのオンライン評価実験を行いました。すべての実験は参加者間計画とし、1人の実験参加者が複数の条件を見比べるのではなく、各実験参加者が評価する動画条件を1種類のみにしました。実験参加者は各条件に無作為に割り当て、無効な回答などを除いた計498名(平均年齢51.69歳)の回答を分析しました。
動画視聴後には、ロボットの印象評価に広く用いられているGodspeed Questionnaire SeriesのAnimacy尺度を用いてMOFUを評価しました。本研究では、日本語版のAnimacy尺度6項目について5段階で回答を求めました。本リリースでは、この尺度によって測定されたアニマシーを「生き物らしさ」と表現しています。
実験1では、その場から移動しない1台のMOFUについて、①膨張・収縮も旋回もしない条件、②膨張・収縮せず、左旋回と右旋回を交互に繰り返す条件、③旋回せず、膨張と収縮を交互に繰り返す条件、④左旋回と右旋回、および膨張と収縮をそれぞれ交互に繰り返す条件、の4条件を比較しました。これにより、膨張・収縮と旋回がそれぞれ「生き物らしさ」の評価に与える影響を調べました。
実験2では、膨張・収縮するMOFUを1台提示した場合と2台提示した場合を比較し、ロボットの台数による違いを調べました。また、2台の場合についても実験1と同様の4種類の動作条件を設け、条件間の違いを探索的に分析しました。2台のMOFUは、互いに協調したり反応したりするのではなく、それぞれ独立して動作しました。
実験3では、MOFUが移動する場面について、①移動のみの条件と、②移動に、左旋回と右旋回を交互に繰り返す動作と、膨張と収縮を交互に繰り返す動作を加えた条件を比較しました。

成果

実験1では、膨張・収縮動作と旋回動作はいずれも、それぞれの動作がない場合と比べて「生き物らしさ」の評価を高めました。また、膨張・収縮のみの条件と旋回のみの条件を比較した追加の分析では、両者の間に明確な差は認められませんでした。
実験2では、膨張・収縮するMOFUを1台提示した場合と2台提示した場合の間で、「生き物らしさ」の評価に明確な差は認められませんでした。また、2台のMOFUについて4種類の動作条件を探索的に分析したところ、膨張・収縮も旋回もしない条件は、旋回、膨張・収縮、および両者を組み合わせた各条件より「生き物らしさ」の評価が低くなりました。一方、他の3つの動きのある条件の間には明確な差は認められませんでした。
実験3では、移動のみの条件に比べて、移動に旋回と膨張・収縮動作を加えた条件の方が、「生き物らしさ」が高く評価されました。ただし、実験3では実験参加者数が当初の計画に達していなかったため、今後、十分な実験参加者数を確保して結果を再検証する必要があります。また、旋回と膨張・収縮のそれぞれがどの程度この評価に寄与したのかを分けて調べる必要があります。
以上の結果から、全身の体積が変化する膨張・収縮も、ロボットの「生き物らしさ」の知覚に影響する動作の一つになり得ることが示されました。
以上の3つの実験について、検討内容と主な結果を表1にまとめます。

表1:各実験で検討した内容と主な結果
実験目的:膨張・収縮、旋回、移動が「生き物らしさ」の評価に与える影響
  どのように調べたか 主な結果
実験1 1台のMOFUについて、「膨張・収縮の有無」 × 「旋回の有無」の4条件を比較 「膨張・収縮動作」と「旋回動作」はいずれも、それぞれの動作がない場合と比べて「生き物らしさ」の評価を高めた。「膨張・収縮のみ」と「旋回のみ」の間には明確な差なし。
実験2 膨張・収縮するMOFUの1台提示と2台提示を比較。
2台提示での4つの動作条件(「膨張・収縮の有無」×「旋回の有無」)も探索的に比較
1台と2台の間で「生き物らしさ」に明確な差なし。
探索的分析では、動作なし条件が他の3つの動作あり条件より低く、動作あり3条件間には明確な差なし。
実験3 移動のみと、移動+旋回+膨張・収縮を比較 移動+旋回+膨張・収縮の方が「生き物らしさ」が高く評価された*

* 実験参加者数が当初の計画に達しておらず、今後の再検証が必要。

今後の期待

今後は、膨張・収縮を関節運動や体軸方向の伸縮など他の動きと直接比較することも重要と考えられます。また、膨張・収縮の大きさ、速さ、周期などを変えて評価することで、どのような体積変化が人の印象にどのような影響を与えるのかを、より詳しく明らかにする必要があります。
今回の評価は動画を用いたオンライン実験でした。MOFUは、柔らかい毛状外装や静音性に配慮した設計など、人と近い距離で関わることを意識した特徴も備えています。今後は、MOFUと実際に対面する実験を行い、触覚や聴覚を含めた体験を評価するとともに、「生き物らしさ」だけでなく、快適さ、温かみ、不気味さ、近づきたいと感じる程度など、より幅広い印象について調べることが考えられます。
こうした検討を重ねることで、全身の体積変化を、人と関わるロボットが動きを通して印象を伝えるための設計要素として活用するための知見につながることが期待されます。例えば、体積変化を取り入れることで、より直感的で表現力のある人とロボットのやり取りへと発展させることも考えられます。特に、限られた空間や静かな動作が求められる場合のある医療・福祉分野などにおいても、全身の膨張・収縮をロボットの表現として活用できる可能性があります。

(参考動画)
動画1:MOFU (MOrphing Fluffy Unit): A Robot with Whole-Body Expansion and Contraction(動画:1分20秒)

動画2:本研究で用いた刺激動画

(論文情報)

著者名:Taisei Mogi, Mari Saito, Yoshihiro Nakata
論文名:MOFU: Development of a MOrphing Fluffy Unit with expansion and contraction capabilities and evaluation of the animacy of its movements
雑誌名:PLOS ONE
DOI:10.1371/journal.pone.0354179
公表日:2026年8月18日(火)

(外部資金情報)

本研究は、ソニーグループ株式会社から研究資金の支援を受けて実施されました。

詳細はPDFでご確認ください。

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