2026.07.03
総務省が委託する「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発(JPMI00316)」の取り組みの一環として、電気通信大学(東京都調布市、学長:村松 正和)、ライテラジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小野原 通之)、慶應義塾大学(東京都港区、学長:伊藤 公平)の研究グループは、Lighteraが開発した空孔コア光ファイバを用いた波長多重PONシステムにおいて、光ファイバへの入力パワーが最大10Wを超える大電力光信号伝送に成功しました。空孔コア光ファイバは、従来のシリカコア光ファイバと比較して、非線形効果が極めて小さいことは知られていますが、10Wを超える実際の通信用光信号を用いて、高品質な大電力伝送を実現したのは世界で初めてです。
第5世代移動通信システム(5G)に代表される無線システムでは、無線信号の高周波数化に伴い、モバイル通信やIoT(Internet of Things)向けの多数の無線基地局が必要となります。このため、現在加入者系光ネットワークとして利用されているPONシステムへの適用が検討されています。さらに、波長分割多重伝送を組み合わせることで、より大容量の通信が期待されています。また、光ファイバ回線を活用し、無線基地局の災害時の可用性や無電源化を目的とした光ファイバ給電の実現も期待されています。
PONシステムの下り伝送では、通信用光信号パワーを増大することで、より多くの無線基地局への通信が可能になります。しかし、現在最も広く利用されているシリカコア光ファイバでは、コア内で発生する非線形効果によって通信用光信号パワーの増大には大きな制約がありました。一方、光ファイバで伝送可能な光パワーを飛躍的に向上できれば、通信用信号だけではなく、光エネルギーの伝送も可能となります。これにより無線基地局への給電も見込まれ、無線基地局の災害時の可用性の向上にもつながります。
今回の研究では、PONシステムの中央局(OLT)とスプリッタ間に新たに空孔コア光ファイバを導入し、5Gの標準規格であるキャリア周波数28GHzの5G NR信号で変調された4つの波長の通信用光信号を多重伝送することで、従来のシリカコア光ファイバで発生するさまざまな非線形効果を大幅に抑制し、10Wを超える高品質な大電力伝送を達成しました。これは、光通信を多数の利用者で共有するPONシステムにおいて、4096以上に信号を分岐でき、中央局の設備投資が大幅に低コスト化できる可能性を示すものです。
今回の実験では、4波長の通信用光信号を用いましたが、今後はさらに広い波長域で、多波長化を進め、より多くの無線基地局との通信が可能なモバイル通信およびIoT向けのPONシステムの構築を実現していく予定です。
今回開発した内容は、IEEEおよびOptica Publishing Groupが発行するJournal of Optical Communications and Networkingの2026年8月号に掲載される予定です。
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